ミャンマーでは2019年に政府より畜産増産5カ年計画が出されるなど、近年 畜産業の開発が進められています。こうした状況から、畜産業でミャンマーへのビジネス展開を検討する方も増えています。そこで今回は、ミャンマーの畜産事情についてご紹介していきます。

ミャンマーの主な畜産の生産量は、多い順に鶏肉、豚肉、牛肉となっており、鶏肉の生産が最も盛んです。 東南アジアの国は、豚肉や鶏肉のいずれかに生産量が偏る傾向にある中で、ミャンマーは鶏肉・豚肉ともバランス良く生産している国だといえます。

また、東南アジアの国としては生乳の生産も盛んです。では、鶏、豚、牛に分けてそれぞれの畜産業の状況を見ていきましょう。

ミャンマーは養鶏が最も盛ん、しかしまだまだ発展の余地あり

ミャンマーの畜産

まず始めに、ミャンマーでも最も盛んに生産・消費されている鶏肉について説明します。ミャンマーでは鶏肉産業はすでに盛んではありながら、まだまだ課題や発展の余地があります。

ミャンマーでの鶏肉・卵の消費・生産状況

ミャンマーでは、鶏・豚・牛の中では鶏肉を最も多く消費します。安価であることや、東南アジア一体の食文化として鶏肉が盛んに用いられてきたこと、後述の牛肉のような制限が歴史上かけられなかったことが、鶏肉の消費が安定的に多い要因です。

さらに、近年では外資系ファストフードチェーンなどが鶏肉を主体とする商品を多く販売するようにもなりました。そのため、ますます鶏肉の消費量は増加傾向にあるようです。

一方鶏卵については、鶏肉と比較すると消費量は少なく、鶏の畜産は基本的に鶏肉の生産を軸に発展してきています。

生産量で見ると、鶏肉の生産量は2009年の時点では923千トン程度だったのが、2016年には1521千トンに。外資系のファストフードの進出などを背景に、生産量・消費量とも大きく拡大しています。

鶏卵についても、2009年に353千トンだったものが、2017年には同年で561千トン。鶏肉と比較すると少ないですが、拡大はしている状況です。

https://www.alic.go.jp/content/000152434.pdf

https://www.alic.go.jp/content/001173173.pdf

ミャンマーの養鶏の特徴

ミャンマーでは、畜産の中では鶏が主産物と位置付けられており、各地で盛んに行われています。その主な特徴をいくつか紹介します。

一つは、いわゆる「地鶏」の生産が盛んであるということ。日本で一般的な鶏肉とされているブロイラーより、歯応えや独特の味わいがある地鶏の方が、好んで生産・消費されているようです。価格も、地鶏の方が高い傾向があります。

もう一つは、生産者に小規模・零細農家が多いこと。概ね80%を占めるとの推計もありますが、いずれにしても飼育数3,000羽未満の小規模農家が圧倒的多数を占めています。ただし、近年は国内外の大手企業による大規模な養鶏業の開発も進んでいます。

最後に、基本的にミャンマーでの養鶏は「鶏肉の生産」を軸として行われています。鶏卵はあくまで副次的な生産物という位置づけが強く、一部の鶏卵生産農家も、最終的には鶏肉を生産することを考えて鶏を飼育しています。

ミャンマーでの養鶏業の課題と発展の余地

ミャンマーの鶏の畜産は以上のように盛んに行われていますが、まだまだ産業としては発展途上で、いくつかの課題を抱えています。

地方の零細農家などでは、ただ庭に鶏が放し飼いにされていることが多く、疫病などに脆弱な生産環境となっています。また、食肉処理施設の衛生面の質が低い、生産システムが未発達である、といった課題もあります。

しかし、近年は外国資本の大手企業などがミャンマーでの配合飼料の生産を拡大させており、高い栄養価と疾病予防の機能を備えた飼料を入手しやすくなった側面もあります。これが鶏の疫病予防につながってきています。また、生産システムなどについても、国内外の企業による投資が進んできており、今後の改善が期待されるところです。

ミャンマーの経済発展を背景に、鶏肉全体の生産量のさらなる拡大と、地鶏など高価格な肉の普及が想定されます。鶏肉はもともとミャンマー人にも馴染みのある肉ですので、養鶏業には今後も順調な発展が期待できます。

養豚業では産業基盤の整備が急ピッチで進められている

ミャンマーの養豚

続いては、ミャンマーでの豚肉の畜産について紹介します。

豚肉の生産は鶏肉の次に多い

豚肉は、ミャンマーでは鶏肉の次に生産量が多い肉。豚肉もまた、ミャンマー料理の中では一般的に使われており、ミャンマー人にとって身近な肉の一つです。生産量は2017年時点で961千トン。2013年に比べ1.3倍に増加しており、鶏肉同様に豚肉の市場も拡大傾向です。

尚、東南アジアでもインドネシア・フィリピン・タイなどでは、宗教上の理由で豚肉を食べないイスラム教徒を除き、豚肉を食べることは一般的です。したがって、他の東南アジア諸国と比較すると、ミャンマーの豚肉生産は特筆して多いわけではありません。

ミャンマーでの豚の畜産方法

豚肉には一定の需要があり、その市場規模も拡大傾向ではあるのですが、鶏はおろか、肉の生産量が豚より少ない牛と比較しても、産業としての養豚は未発達です。豚の畜産を専門的に行う養豚場は、2000年より前はほぼ皆無で、近年になってようやく一部の養豚場をビジネスとして運営する動きが出始めている程度。

現在でも豚の生産は、小規模農家などが副業に近い形で育てた豚を出荷するものが中心で、産業として充分に成り立っているとはいえない状況です。

ミャンマーの養豚業の課題と可能性

先に紹介したように、ミャンマーではまず豚を畜産業として成立させることが最大の課題です。

ミャンマー政府も豚肉生産の産業化は重要課題と捉えており、ノウハウ・資本双方で外国への協力要請なども積極的に行っています。ビジネスサイドでも、外資系企業などによる養豚場の開発や、品種改良ビジネスなどへの進出が積極的に模索されています。

また、ミャンマーと経済的に結びつきの強い中国では、豚肉が特に盛んに食べられています。中国との人の往来、中国の食文化の普及も影響し、豚肉の消費量は今後もさらに拡大するものと見込まれています。

牛の畜産業は盛んではないが、今後の飛躍的な発展が期待できる

ミャンマーの牛の畜産

最後に、鶏肉・豚肉と比較すると生産量が少ない牛肉についてです。冒頭にもあるとおりミャンマーでは牛乳の生産量も多いので、あわせて紹介します。

ミャンマーの牛肉と乳製品の消費・生産は増加傾向

牛肉の生産量は、2017年の時点で475千トン。豚肉・鶏肉と比べて少なく見えますが、牛肉食がいずれもメジャーではない東南アジア圏の中では、比較的多い部類に入ります。また、2012年時点では320千トンほどだったので、5年で1.5倍近く生産は増加しています。

伝統的なミャンマーの食文化では牛肉をあまり食べず、これまでは高価であったため、手が出にくい食材でした。しかし近年ミャンマーの経済成長によって若者を中心に食文化の多様化が進んでいます。都市部を中心に、牛肉を食べることはさほど特別なことではなくなってきているのが現状です。

また、ミャンマーの牛の畜産では、牛乳の生産も大事な要素です。生乳の生産量は2017年で2,418千トンでしたが、こちらも2012年から1.5倍近くに増加。東南アジアは暑い気候などが牛乳の保存に適さないことから、牛乳消費は盛んではありません。ミャンマーは、そんな東南アジア諸国の中では最も生乳の生産量が多い国となっています。

もともと乳製品などに加工されて盛んに消費されていたことに加え、近年食文化の多様化の影響で、牛乳の消費はさらに拡大しています。生乳としての飲用はまだ発展途上ではありますが、コーヒーや紅茶に混ぜる乳製品などの加工品としての普及が進んでいます。

経済的な余裕裕が出てきたことにより、喫茶店やカフェの利用が活発化したことも背景にあると考えられます。

https://www.alic.go.jp/content/000152434.pdf 

https://www.alic.go.jp/content/001173173.pdf

ミャンマー牛の畜産の変化

ミャンマーの牛の畜産は、他の畜産と比較してもまだ発展の余地が大きいと見られています。そもそもミャンマーで牛を食べるために育てるようになったのは、比較的最近のこと。

1947年に英国から独立する際に、政府は牛食肉を英国(もしくは欧州)文化の象徴として見ていたのか、牛のと殺を制限しました。そのため長年、牛は農業のサポートをしてくれる家畜、もしくは牛乳を生産する目的で育てられていました。年配の方が牛肉を食べない傾向にあるのも、この時代のなごりと言えるでしょう。

一方、近年になって、徐々に食文化の多様化経済発展とともに、牛肉生産が進められるようになってきています。現在では許可性のもと、食肉処理場の整備も徐々に進んでいます。牛乳生産としての牛の畜産自体はこれまでも盛んであったことから、肉牛の畜産を行う素地は、養豚場がない豚肉よりは整っています。

他方、幸か不幸か牛乳の生産量も伸びていることから、牛乳主体の畜産でも充分成り立つ現状も。そのため、肉牛としての畜産を推し進める意欲が起きにくいという事情もあります。

ミャンマーの牛の畜産の課題と可能性

ミャンマーでの牛の畜産は、課題と可能性の双方を秘める産業となっています。

まず課題からご説明すると、先に紹介した通り、肉牛の畜産の歴史は浅く、また牛乳生産としての畜産でもビジネスが成り立つため、普及が進みにくい状況です。

牛の疫病対策や食肉のバリューチェーンなどの生産システムが未整備であることや、先進国では一般的な家畜の売買市場がミャンマーには存在しないなど、牛肉の生産環境が発展途上であることもボトルネックの要因になっています。

一方、ミャンマーの経済成長が今後さらに進む中で、牛肉食の浸透は進む見込みです。牛肉全体の消費量だけでなく、高所得者層を中心に高級肉志向が拡大していくことにより、高単価な肉の需要も拡大が見込まれます。

このような消費増大の余地が大きいことから、牛肉の畜産ビジネスは今後飛躍的な市場拡大が見込まれるビジネス領域といえるのです。

ミャンマーの畜産業が有望な投資先である理由

畜産牧場

ここまで鶏・豚・牛の畜産業の現状を紹介してきました。が、経済発展に伴い発展していくミャンマーの畜産業は、今後の有望な投資先となるでしょう。

ミャンマー政府は畜産業への投資を積極的に呼び掛け

肉の消費量は確実に伸びているにもかかわらず、ミャンマーの畜産業の生産システムはまだ発展途上で、先に紹介した通りさまざまな課題があります。

そこでミャンマー政府は、畜産業の発展が地方経済の重要な成長機会になると位置付け、政府主導で畜産業の制度や設備を進めるとともに、国内外の企業に積極的な投資を呼びかけています。

このような呼びかけに応じる形で畜産業に進出し、ミャンマーの地方経済に貢献できれば、順調にビジネスを発展させることができるでしょう。

所得向上により高級肉需要の拡大が見込まれる

牛肉に関する説明でもすでに述べた通り、人々の所得の向上が肉全体の需要拡大に加え、高級肉への需要拡大につながっています。

高付加価値の肉を安定的に生産・卸売する仕組みみができれば、労働生産性や収益性の向上につながります。高付加価値肉の畜産ビジネスは、先進国であり、衛生面・品質面のこだわりも強い日本人が得意とする領域です。大量生産ではなく品質にこだわった肉の生産に先行投資することで、高い投資効果が実現できる可能性があるのです。

近隣国の中国などからの肉の需要が高い

また、地の利も見逃せません。ミャンマーは、地理的に近接している中国との経済的・文化的結びつきが強い国です。中国は近年世界で最も経済発展が進む国の一つですので、その好影響がミャンマーにも期待できます。

まず、中国人がビジネス・観光さまざまな目的でミャンマーに来ることで、外食産業などの盛り上がりが期待できます。特に豚肉への影響が大きいと考えられますが、中国では他の肉も一般的に食べられているので、畜産全体にも良い影響をもたらすでしょう。

そして反対に、ミャンマーから中国への肉の輸出拡大も想定されます。中国では人口規模・経済規模が急速に拡大していることから、食肉の需要は大きく拡大しています。農産物の需要増をすべて自国の生産で対応するには限界があるので、輸入拡大につながると見られているのです。

現状ではミャンマーからの肉の輸出は充分には行われていませんが、畜産業の発展と中国の需要増加が相まって、今後は中国向けの輸出肉生産も拡大すると期待されます。

ミャンマーの経済発展で伸びが見込める畜産業への投資を検討してみよう

投資と可能性

ミャンマーは元から鶏肉を中心にある程度肉を食べる国ではありましたが、かつては所得水準の低さなどが産業発展のネックとなっていました。

近年は、所得水準の改善や官民双方のテコ入れにより、ミャンマーの畜産業は急速に有望市場に進化しつつあります。ミャンマーにおける投資先に悩む方は、この機会に畜産業への投資を検討してみてはいかがでしょうか。