近年ミャンマーでは若年層が出稼ぎで実家から離れ、高齢者の面倒を見る人が減少しており、介護サービスが必要になってきています。
ヤンゴンやマンダレーなどの大都市では、介護施設より訪問介護サービスを家で受ける高齢者が多く、地方では老人ホームを利用する高齢者が多いです。
介護施設を利用する場合は、寄付金で運営される老人ホームに入る場合が多いのですが、見知らぬ人が世話をすることを嫌がる人が多く、民間の介護施設の利用はまだあまり浸透していないのが現状です。
需要が増えてきているとはいえ、ほとんどの家庭ではまだまだ大家族で住んでおり、家族が高齢者の世話をすることが根付いているため、他人の介護を受けることにも苦手意識があるのでしょう。症状がかなり進行してから介護サービスの利用を考え、ナースエイドや訪問看護師さんを利用するようになることが多いのです。

ミャンマー高齢化の状況

2015年のミャンマー国勢調査によると総人口52,450万人の内、65 歳以上は304万人で全体の5.8%を占めています。高齢者人口は、2035年には2倍(10%)、2050年には3倍(15%)近くまで占める見込みです。
また、平均寿命は2020年では女性が72歳、男性は63歳となり、日本ほどではないものの今後も平均寿命が伸びるでしょう。高齢化への対応は深刻な問題になりかねない状況です。

介護施設の現状

現在、ほとんどの介護施設は社会団体や宗教団体が設立して営んでいます。主に寄付金で成り立っており、ボランティアで担っている介護職員もいます。
社会福祉・救済再復興省は2013 年に、高齢者向けヘルスケアや栄養提供などを行うデイケアセンターを設置しました。
また、2017年に国営のヤンゴン総合病院で高齢者専用病棟の運用を開始し、2018年に社会福祉育成プログラムが始まり高齢化対策に力を入れています。
社会福祉・救済復興省が支援する老人ホーム数は2014年の70ヵ所から、2019年には85ヵ所に増え、政府認定老人ホーム数は58ヵ所となりました。
ここ数年で高齢者の数はどんどん増えてきて、社会団体や宗教団体が営む老人ホームも満床になり、対応できるボランティアの介護職員は減少してきています。区立病院の介護福祉施設もキャパオーバーとなっています。
しかし一方で、民間の介護福祉施設では利用料金が高いにもかかわらず、介護技術を持っていない職員が対応しているため利用者が少なく普及は進んでいません。

介護に関する職種と資格

社会福祉・救済再復興省と労働省は、高齢者のケアをするケアギバーの育成に力を入れており、医科大学や看護大学の講師をケアギバー育成研修の講師とし、育成プログラムを進めています。
カリキュラムには、高齢者たちのメンタルケアなどもあり、実際に高齢者たちと触れ合うトレーニングがあるなど、実習型育成プログラムとなっています。
地方からヤンゴンに出稼ぎに出てきた若者にとっては、介護職が最もつきやすい職種になっており、老人ホームや病院、私立の介護トレーニングスクールなどが開いたナースエイド3か月コースまたは6ヶ月コース修了後、高齢者の訪問介護の仕事についています。
介護職員本人と高齢者の家族と直契約で行っている人もいれば、紹介会社からを通してサービスを提供している人もいます。
以前は高卒ではなくても介護職員になれましたが、今後政府は高卒を基準にする予定との事です。

高齢者の栄養管理について

ミャンマーでは栄養管理の意識がここ最近高まっており、高齢者向けに自宅までお弁当を配達するサービスが人気となっています。
ミャンマーでは、高齢者の死亡原因の中で糖尿病がトップ3に入っており、糖尿病対策の栄養管理サービスの利用者が多いようです。
ミャンマーでは、最近カロリーを気にする人も増え、健康食材を取り入れる老人ホームも増えてきています。

ミャンマーの栄養管理

健康保険制度について

ミャンマーには介護保険制度がまだなく、施設を利用する高齢者は家族の援助金および寄付金などで生活をしています。政府は「ミャンマー・ヘルス・ビジョン2030」を掲げ、2018年には健康およびソーシャルケア保険制度を実施しましたが、民間ではその制度の普及がまだ遅れています。

ミャンマーの介護サービスの問題点とこれから

ミャンマー人は介護職員の交代での対応を嫌がる人が多く、一人の介護職員に専任で対応して欲しいという、強い親近感を求める傾向にあります。
そのため、日本のようにシフトを組んで交代で高齢者の対応をするスタイルが浸透しづらいという問題があります。
また、日本では高齢者も可能な限り自分の事は自分でやる、介護職員は手伝う、というスタンスですが、ミャンマーでは介護職員に全てお任せという状態で、一部の高齢者は自分で何もできなくなり、精神的にも肉体的にも悪影響になっているなど、介護サービスのあり方にも多くの問題を抱えています。
施設の不足や、職員の能力不足など問題点を抱えている中、ミャンマーらしさを考慮した介護施設作りが早急に必要となっていくと言えるでしょう。

まとめ

2018年から始まった政府の対策により、介護施設・サービスは今後さらに拡大し、介護職員の育成や保険制度の強化にも力を入れていくことでしょう。
家族に頼らず自立できる高齢者社会が、ミャンマーでも進んでいくことと思います。